カタログ翻訳では、文章の翻訳だけでなく、原稿整理・多言語DTP・校正・印刷データ管理まで一連の工程として設計することが重要です。
この記事でわかること
- カタログを多言語化するときの基本的な進め方
- カタログ翻訳の費用を左右する主な要因
- 翻訳後に必要になるDTP・組版・校正の考え方
- 文字化けやレイアウト崩れなど、よくある失敗
- ページ数や言語数が多いカタログを効率化する方法
カタログ翻訳は「文章を外国語に置き換えるだけ」ではない
海外向けの製品カタログを制作するとき、「日本語原稿を翻訳会社に渡せば完成する」と考えてしまうと、後工程で想定以上の修正が発生することがあります。
カタログには、製品名、仕様、キャプション、図表、注意書きなど多くの情報が含まれています。さらに、翻訳された文章を誌面へ戻すDTP・組版、画像や図版との対応確認、校正、印刷データの作成まで必要です。
特にページ数や製品点数が多い場合は、翻訳する文章を一つずつ人手で管理する方法では負担が大きくなります。セザックスが支援した部品メーカーD社では、2000ページ以上の製品カタログの多言語化に対し、XMLを利用した自動組版システムへ翻訳ツールを組み込みました。さらに画像管理システムによって製品写真や各国語版のカタログデータを一元管理し、翻訳時間とコストの削減、海外展開の迅速化につなげています。
つまり、多言語カタログでは「翻訳」を単独の作業として考えるのではなく、翻訳前後の制作工程まで含めて設計することが重要です。
カタログ翻訳の基本的な進め方
カタログ翻訳は、次のような流れで進めます。実際にはカタログの仕様や言語数によって工程は変わりますが、翻訳前の準備と翻訳後の確認を省略しないことがポイントです。
1.対象ページ・翻訳範囲を整理する
最初に、「何を翻訳するのか」を明確にします。
- カタログ全ページを翻訳するのか
- 製品情報だけを翻訳するのか
- 表紙・目次・索引も対象にするのか
- 画像内に埋め込まれた文字を翻訳するのか
- 何言語へ展開するのか
ページ数だけでなく、表や図版内の文字、製品点数、重複する文章なども把握しておくと、その後の翻訳方法を検討しやすくなります。
2.翻訳に使用する原稿と制作データを整理する
次に、翻訳元となる日本語原稿とカタログの制作データを整理します。冊子のPDFだけではなく、InDesignなどの元データ、画像、図版、表データなどを確認しておくと、多言語DTPを進めやすくなります。
InDesignは、印刷物のページレイアウトに特化したDTPアプリケーションです。元データを利用できれば、翻訳文章を既存レイアウトへ反映する工程を組み立てやすくなります。
一方で、既存カタログの写真・イラスト・文章などを海外版へ転用する場合は、利用条件についても確認しておきましょう。印刷物は写真、イラスト、デザイン、文章、図版など複数の著作物から構成されるため、当初とは異なる用途への制作データの転用では、権利関係の確認が必要になる場合があります。
3.翻訳する
原稿を整理したら翻訳を進めます。このとき重要なのが、同じ製品名や専門用語について、ページごとに表記が変わらないよう管理することです。
特に製品カタログでは、製品名称、機能名称、仕様項目などが繰り返し登場します。ページ数が増えるほど管理対象も増えるため、大規模カタログでは翻訳ツールやデータベースを組み合わせた仕組みを検討する余地があります。
D社の事例でも、2000ページを超えるカタログを各国向けに一つずつ制作するのではなく、翻訳ツールと自動組版を組み合わせることで多言語展開を効率化しています。
4.翻訳原稿をDTP・組版する
翻訳した文章をカタログへ流し込み、各言語版の誌面を作成します。
ここで注意したいのが、言語が変わると文章の長さも変わることです。日本語版では収まっていた文章が翻訳後にはスペースへ収まらなくなるなど、既存レイアウトをそのまま利用できないケースがあります。
そのため翻訳工程とDTP工程を完全に分離するのではなく、最終的な誌面を想定しながら調整できる制作体制が重要になります。
5.文字・レイアウト・内容を校正する
DTP後は、翻訳内容だけではなく、誌面として問題がないかを確認します。
- 翻訳文章の抜けや重複がないか
- 製品番号と製品写真が対応しているか
- 文章が枠からはみ出していないか
- 文字が正しく表示されているか
- 改行位置や表組みが崩れていないか
遠隔地の担当者や海外拠点と確認を進める場合には、PDFを利用する方法もあります。PDF校正は、配送を待たずにデータを送受信でき、PDF上に修正指示を書き込めるため、離れた場所との校正を進めやすい方法です。
6.各言語版を管理して印刷・展開する
校了後は、印刷用データやPDFなど用途に合わせたデータを作成します。
複数言語を継続して運用する場合は、制作して終わりではありません。日本語版の製品仕様が更新されたとき、「どの国の、どのページを修正する必要があるのか」を追跡できる状態にしておくことが重要です。
D社では、各国語版のカタログデータを画像管理システムで管理し、品質チェックや販促利用にも活用しています。多言語化するカタログの規模が大きくなるほど、翻訳方法だけでなく完成後のデータ管理まで設計しておくことが、次回改訂時の負担軽減につながります。
カタログ翻訳の費用を左右する要因
カタログ翻訳の費用は、「100ページだからいくら」というページ数だけでは決まりません。翻訳対象となる情報量や言語、DTP作業、校正方法などによって必要な作業量が変わります。
| 項目 | 費用に影響するポイント |
|---|---|
| 翻訳量 | 本文・表・図版・キャプションなど翻訳対象となる文章量 |
| 言語数 | 展開する国・地域と言語の数 |
| 原稿の状態 | 翻訳対象を整理したデータがあるか、冊子から抽出する必要があるか |
| DTP | 翻訳後の文字流し込み、レイアウト調整、表組みなどの作業量 |
| 校正 | 確認回数、関係者数、海外拠点とのやり取りなど |
| データ管理 | 複数言語版の一元管理、自動組版などの仕組みが必要か |
特に大量ページを継続的に多言語展開する場合、毎回人手で同じ工程を繰り返すことが適しているとは限りません。D社のように、翻訳・自動組版・データ管理を仕組み化することで、長期的な制作負担を軽減できるケースもあります。
そのため見積もりを依頼するときは、「翻訳料金」だけを比較するのではなく、翻訳後のDTP、校正、印刷データ作成、今後の改訂まで含めて必要な工程を整理すると、総コストを比較しやすくなります。
カタログ翻訳で起こりやすい失敗
失敗1.翻訳だけ発注し、DTPを後から考える
翻訳済みの文章が納品されてからDTPを始めた結果、文字数が既存レイアウトに収まらず、大量の調整が必要になるケースがあります。
カタログは文章だけでなく写真や図版、表組みと組み合わせて情報を伝える媒体です。翻訳会社と制作会社を分ける場合も、誰が翻訳原稿を誌面へ反映し、誰がレイアウト上の問題を調整するのかを事前に明確にしておくことが重要です。
失敗2.画面上では気づきにくい文字トラブルを見落とす
データの受け渡しでは、文字環境にも注意が必要です。
セザックスの技術コラムでは、文字コードや利用環境の違いによって、同じ文字でも環境によって字形が変わるケースを紹介しています。さらに、文字コードを正しく読み取れなければ文字化けが発生することもあります。
過去のOSを例にした記事ではありますが、「制作側で正しく見えているから、相手の環境でも同じように表示されるとは限らない」という点は、多言語データを扱う際にも意識したいポイントです。
特に多言語カタログでは、翻訳内容だけを読むのではなく、最終的なPDFや印刷物の状態で文字・記号・書体を確認する工程を設けましょう。
失敗3.製品情報と翻訳文章の対応関係が分からなくなる
製品点数が多いカタログでは、修正を繰り返すうちに「この文章はどの製品に対応しているのか」「日本語版の修正がどの言語版へ反映されたのか」が分からなくなることがあります。
ページ単位でファイルを管理するだけでは、規模が大きくなるほど確認作業も増えます。D社が翻訳ツール、自動組版、画像管理システムを組み合わせたように、大規模な多言語カタログでは、コンテンツと制作データをどのように紐付けて管理するかまで検討する必要があります。
失敗4.完成後の改訂を想定していない
製品カタログは、一度作れば終わりとは限りません。新製品の追加、仕様変更、廃番などに伴って更新されます。
多言語版が増えれば、日本語版の変更を複数の言語へ反映する必要があります。初回制作時の価格だけで判断せず、改訂時に翻訳対象を特定しやすいか、既存の翻訳や画像を再利用しやすいかといった運用面まで考えることが大切です。
大量ページ・多言語カタログでは「仕組み化」も検討する
数十ページ程度の単発カタログと、数千ページを複数言語へ展開する製品カタログでは、適した制作方法が異なります。
特に、次のような条件が重なる場合は、人手による翻訳・DTPだけでなく、データベースや自動組版を利用した制作方法も検討する価値があります。
- 製品点数やページ数が多い
- 複数の国・言語へ展開する
- 同じ製品情報が複数ページで利用される
- 仕様変更や製品追加が頻繁に発生する
- 毎年・毎シーズン改訂する
実際にD社では、2000ページ以上のカタログ制作に対してXMLを活用した自動組版を導入し、翻訳ツールも組み込むことで多言語展開を可能にしました。さらに画像や各国語版データまで一元管理することで、制作だけでなく品質チェックや販促利用の効率化にもつなげています。
ページ数が多く、多言語版を継続運用する企業ほど、「1冊をどう翻訳するか」ではなく、「今後もカタログを更新し続けられる制作フローをどう構築するか」という視点が重要になります。
カタログ翻訳を依頼する前に整理しておきたい項目
制作会社へ相談するときは、次の情報を整理しておくと、必要な工程や見積もり条件を共有しやすくなります。
- 翻訳したいカタログのページ数
- 翻訳対象となるページ・文章の範囲
- 翻訳する言語と国・地域
- InDesignなどの制作元データの有無
- 画像・図版内の文字を翻訳するか
- 専門用語や製品名の用語集の有無
- 海外拠点など校正担当者の有無
- 印刷物、PDF、Webなど完成後の用途
- 今後の改訂頻度
条件が分からない段階でも、既存カタログと「どの国向けに展開したいか」を整理しておけば、翻訳・DTP・校正・印刷までの工程を検討しやすくなります。
カタログ翻訳は多言語化後の運用まで考えて設計する
カタログ翻訳をスムーズに進めるには、翻訳品質だけではなく、元原稿の整理、DTP、文字確認、校正、各国語版のデータ管理まで含めて設計することが重要です。
ページ数や言語数が増えるほど、人手による管理だけでは制作負担が大きくなります。一方、D社の事例のように、翻訳ツール、自動組版、画像管理を組み合わせることで、大規模な製品カタログでも効率的に多言語化できる可能性があります。
セザックスでは、カタログの企画・デザイン・印刷だけでなく、翻訳、多言語DTP、システムを活用した制作フローまで含めて検討できます。既存カタログの多言語化や、大量ページの海外向けカタログ制作でお困りの場合は、お気軽にご相談ください。