「せっかく時間と予算をかけてカタログを作ったのに、営業現場ではほとんど使われていない」
こんな声、聞き覚えありませんか。

制作側は頑張った。
情報も揃えた。
写真もきれい。

なのに、商談の机の上では別の資料ばかりが開かれている。
あの瞬間の、ちょっとした気まずさ。
作った担当としては、胸の奥がチクッとしますよね。

Webが主流の時代に、紙のカタログは必要なのか。
社内でそう問われるのも自然です。
とはいえ、展示会で名刺交換した直後に、相手が何気なくページをめくって「これ、面白いですね」と言う。

紙の質感や写真の見え方が、言葉より先に“会社の印象”を伝えてしまう。
そんな場面も、確かにあります。
カタログ印刷は、正解がひとつではありません。

デザインを優先するとコストが跳ね上がり、紙質を落とすと安っぽく見える。
営業が使いやすい構成にしたいのに、ブランドルールとぶつかる。
どこかで折り合いをつけないと前に進まないのに、その折り合いがいちばん難しい。


このまま勢いで刷新すると、読者であるあなたが「結局、また使われないカタログを増やす」損をするかもしれない。
だから、この記事では、少しだけ立ち止まって考える材料をまとめていきます。

カタログ印刷は「作ること」が目的になっていないか?

営業現場で“開かれないカタログ”が生まれる理由

「毎年更新するのが当たり前」。
この空気、強いですよね。
更新しないと営業から不安が出るし、上司からも「今年は新しいのある?」と聞かれる。
結果として、前年データの差し替えが主目的になり、いつの間にか“配布物を切らさない”ことがゴールになる。

でも、カタログ印刷が本来担っているのは、配るための紙ではなく、商談を前に進める道具のはずです。
たとえば、商談の冒頭。
相手が「で、御社の強みは?」と聞いた瞬間、営業担当の手が止まる。
カタログを開くより、頭の中の定番トークで話したほうが早い。
ページを探すのが怖いのです。

情報が多すぎて、順番が“読む人”向けになっていると、説明する側は迷います。
ここ見せたいのに、前段が長い。
肝心の比較表が後ろの方で見つからない。

その小さなストレスが積み重なると、最終的に使われなくなります。
あなたの会社でも、配布した後の反応を追えていないまま、次年度の改訂が始まっていませんか。
使われない理由は、内容が悪いというより、「使う場面を想定していない」ことが多いのです。

カタログをみてる男性

「情報を詰めるほど伝わる」という思い込み

製造業や建材のように製品点数が多いBtoB企業ほど、「載せないと問い合わせが来ない」という不安が出ます。
仕様、型番、対応規格、オプション…。
気持ちはわかります。

けれど、相手が最初に知りたいのは、たいてい“全部”ではありません。
「自社の課題に当てはまるのはどれ?」という入口です。
そこが見えないカタログは、分厚いほど“読む気力”を奪ってしまう。
とはいえ、載せない決断は怖い。

社内から「なんで削ったの?」と言われる。
営業から「これも必要」と言われる。
矛盾だらけです。
だからこそ、カタログ印刷では「どこまで載せるか」より、「どうやって探せる状態にするか」を考えたほうが、現場はラクになります。
索引、用途別の導線、比較表の置き方。全部を削らなくても、伝わり方は変えられます。

デザインで差がつくのは、派手さではなく「使われ方」

商談の流れに寄り添うレイアウトとは

デザインというと、つい“見た目の良し悪し”の話に寄りがちです。
でも、営業資料としてのカタログ印刷は、見栄えだけだと途中で息切れします。
むしろ「説明しやすい」「迷わない」「相手が質問しやすい」。
このあたりが効いてきます。

最初に開かれるページはどこでしょう。
会社案内?製品一覧?それとも事例?
現場だと、いきなり製品ページから入ることも多いですよね。

ページ番号を伝えやすいか、指を差しながら説明できる余白があるか、図版の位置が“会話の順番”に合っているか。
たとえば、写真が大きくても、説明のキーになる仕様が見つからないと、相手は質問を飲み込みます。質問が減ると商談は静かになります。
静かな商談、怖いですよね…

ブランド統一と営業の使いやすさ、そのせめぎ合い

デザイン制作の場で、必ず出てくるのがブランドガイドラインの話です。
「色はこの範囲で」「写真のトーンは統一」「余白はしっかり」。
どれも正しい。間違っていません。

ただ、営業の立場からすると、「ここ、もう少し強調したい」「この比較、1ページで見せたい」という本音もある。
どちらかを切ると、どちらかが不満を抱える。
よくある構図です。

ここで無理に正解を決めなくてもいいのです。
たとえば、ブランドを体現する冒頭数ページと、営業が使いやすい実務ページを役割分担する。
全部を同じルールで縛らない。

そうした“折り合い”を設計できるかどうかで、カタログ印刷の実用度は大きく変わります。
現場の声を聞かずに仕上げた美しいデザインほど、机の上で眠りがち。
これは、多くの現場で見てきた現実です。

紙質の選び方ひとつで、会社の印象は変わってしまう

高級紙=正解、ではない理由

紙はコストです。同時に、メッセージでもあります。
触った瞬間、「しっかりしている」「軽い」「意外と薄い」。
相手は無意識に感じ取っています。

それなのに、紙質選びは「前回と同じで」「見積が安い方で」と、あっさり決まることが少なくありません。
忙しいですからね。
でも、その数秒の判断が、会社の印象を左右しているかもしれないとしたら。

「せっかくなら良い紙を使おう」。
この発想自体は悪くありません。
ただ、高級紙は重い。

展示会で何冊も持ち歩く営業にとっては負担ですし、相手も持ち帰りづらい。
業界によっては、「立派すぎる=価格が高そう」という印象を与えることもあります。
営業担当がこっそり「正直、ちょっと重いのですよね」と漏らす場面、見覚えありませんか。

紙質は、ターゲットとの相性がすべてです。
建材なら質実剛健、ITサービスなら軽やかさ。
見た目の高級感より、「この会社、ちゃんとしてそうだな」と思われるかどうか。
そこを外すと、どんなに印刷品質が高くても意味を持ちません。

「この会社、ちゃんとしてそう」と思われる紙の条件

厚み、白色度、表面加工。この3つだけでも、印象はかなり変わります。
写真が沈まないか、図面の線が潰れないか。
実は、紙のスペック表だけ見ても、ほとんど伝わりません。
触って、比べて、「あ、違う」と感じることが大事です。
もし今のカタログを手に取って、「これ、うちの強みと合っているかな」と一瞬でも迷ったなら、それは見直しのサインかもしれません。

綴じ方は“脇役”ではなく、使い勝手を左右する主役

中綴じ・無線綴じ・リング製本、それぞれの向き不向き

綴じ方について、深く考えたことはありますか。
中綴じ、無線綴じ、リング製本。
名前は知っていても、「今回はどれが最適か」まで考える機会は意外と少ないものです。

でも、開きにくいカタログは、それだけで使われなくなります。
中綴じは軽くて配りやすく、ページ数が少なければ扱いやすいです。
一方、無線綴じはページ数が増えても見栄えが良いですが、開きづらいことがあります。

リング製本は実務向きで、開きやすく、書き込みもしやすい。
商談用なのか、社内資料的に使われるのか、展示会で配るのか。
用途が違えば、正解も変わります。

「あとから差し替えたい」は最初に考えておくべき

製品改訂が多い業界では、「ここだけ変えたい」が頻繁に起こります。
そのたびに刷り直すと、コストも時間もかかる。
分冊やファイル形式にしておくと、後々ラクになるケースもあります。
初期費用は少し上がっても、トータルで見ると合理的。
目先の印刷費だけで判断すると、後で首を絞めることになりがちです。

成果が出るカタログは、印刷前の「対話」でほぼ決まる

良い印刷会社ほど、すぐに刷らせてくれない

カタログ印刷で失敗しやすいのが、「丸投げ」と「完全指示」の両極端です。
任せきりだと意図が伝わらない。
細かく指示しすぎると、視野が狭くなる。

ちょうどいいのは、「目的は共有するけれど、答えは一緒に探す」状態です。
「誰が、どこで、どう使うんですか?」
この質問を何度もしてくる印刷会社は、少し面倒に感じるかもしれません。

でも、その“しつこさ”が、後悔を減らします。
「それ、本当に必要ですか?」と言われたとき、ドキッとする。
でも、その一言で救われるケースも多いのです。

印刷×デザイン×デジタルを横断して考える意味

カタログ単体で完結させる必要はありません。
Webで詳細を補完する。
マニュアルと役割を分ける。
展示会用に抜粋版を作る。
印刷とデジタルを分けずに考えることで、カタログ印刷は“古い媒体”ではなく、販促全体の起点になります。
ワンストップで相談できる相手がいると、この設計が一気に現実的になります。

すべてを変えなくていい。まずは一冊、見直してみませんか

「今年はここだけ変える」という考え方

大改革は疲れます。社内調整も大変です。
だから、「今年はここだけ変える」で十分です。

紙質を少し変える。
構成を入れ替える。
綴じ方を見直す。

小さな変更でも、営業現場の反応は変わります。
全部を理想形にしなくていい。
まずは、使われていない理由を一つ潰す。
その積み重ねが、成果につながります。

今のカタログを手に取り、「これ、どこで困っているんだろう」と考えてみてください。
答えは、意外と目の前にあります。

誰かに相談することで、見えてくる選択肢もある

社内だけで考えていると、視点はどうしても固定されます。
外の視点が入ると、「そんなやり方もあったのか」と気づくことがあります。

いきなり刷新を決めなくてもいい。
まずは話してみる。
それだけで、次の一手が少し軽くなるかもしれません。

カタログ印刷は、作った瞬間ではなく、使われた瞬間に価値が生まれます。
その一冊が、営業の会話を前に進める存在になるかどうか。
少しだけ立ち止まって、見直す価値はあるはずです。

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