企業Webサイト制作の成否は、デザインの良し悪しではなく、目的・対象者・情報・運用体制を制作前に整理できるかで決まります。
この記事でわかること
- 企業Webサイト制作でよくある失敗
- Webリニューアルの目的を明確にする方法
- 発注前に整理しておきたい情報と要件
- 成果につながるサイト設計とデザインの考え方
- 公開後にサイトを育てるための運用体制
企業Webサイト制作でよくある失敗とは
企業Webサイトをリニューアルしたものの、「見た目は新しくなったが問い合わせが増えない」「更新しにくく、すぐに情報が古くなった」「社内から必要な情報が見つからないと言われる」といった問題が起こることがあります。
こうした失敗の多くは、制作会社のデザイン力や技術力だけが原因ではありません。発注側と制作側の間で、サイトの目的、対象者、掲載情報、公開後の運用方法が十分に共有されないまま制作が始まっていることに根本的な原因があります。
企業Webサイト制作を成功させるためには、画面のデザインを考える前に「誰に、何を伝え、どのような行動につなげるのか」を整理する必要があります。
失敗1:リニューアル自体が目的になっている
「デザインが古くなった」「競合他社がサイトを新しくした」「前回のリニューアルから年数が経った」といった理由は、見直しのきっかけにはなります。しかし、それだけではリニューアル後の成果を判断できません。
企業Webサイトには、会社の信頼性を伝える、商品・サービスの理解を促す、問い合わせを獲得する、採用応募を増やす、既存顧客を支援するといった複数の役割があります。どの役割を優先するかによって、必要なコンテンツや導線は変わります。
成功の分かれ道は目的を行動まで具体化すること
目的は「認知度を上げる」「ブランディングを強化する」といった抽象的な表現で終わらせず、利用者に起こしてほしい行動まで具体化します。
- 製品情報を理解し、見積もりを依頼してほしい
- 会社の技術力を知り、商談候補に加えてほしい
- 採用情報を確認し、エントリーしてほしい
- カタログや資料をダウンロードしてほしい
- 営業担当者に代わって基本的な疑問を解消したい
目的と行動が定まれば、必要なページ、優先すべき情報、問い合わせ導線、公開後に確認する指標も決めやすくなります。
失敗2:社内の伝えたい情報を並べてしまう
企業Webサイトでは、会社概要、沿革、製品一覧、設備、技術、ニュースなど、社内が掲載したい情報が数多く挙がります。これらを整理せずに並べると、情報量は多くても、利用者にとって必要な情報を見つけにくいサイトになります。
伝わるカタログを設計する際の考え方と同様に、Webサイトでも重要なのは、作り手の論理と読み手の心理のずれをなくすことです。企業が説明したい技術や機能と、顧客が知りたい「自社の課題をどう解決できるのか」は、必ずしも一致しません。
成功の分かれ道は利用者ごとに情報を整理すること
まず、サイトを訪れる代表的な利用者を具体化します。BtoB企業のサイトであれば、購買担当者、技術担当者、経営層、既存顧客、求職者など、立場によって知りたい情報が異なります。
| 利用者 | 主な関心 | 用意したい情報 |
|---|---|---|
| 購買・調達担当者 | 対応範囲、品質、納期、取引条件 | サービス概要、対応体制、よくある質問 |
| 技術担当者 | 仕様、設備、技術的な実現性 | 技術情報、設備情報、事例、仕様資料 |
| 経営層 | 導入効果、信頼性、継続性 | 導入事例、企業情報、実績、方針 |
| 求職者 | 仕事内容、職場環境、将来性 | 社員紹介、業務内容、採用情報 |
利用者別に「どのような課題を抱え、何を判断するために訪れるのか」を考えると、掲載情報の優先順位が明確になります。
失敗3:サイト構成を決める前にデザインを始める
トップページの見た目やメインビジュアルから検討を始めると、デザイン案の比較に時間がかかる一方で、肝心の情報設計が後回しになりがちです。
Webデザインは情報を装飾する作業ではありません。利用者が必要な情報を理解し、迷わず次の行動へ進めるように、情報の強弱や順序、関係性を視覚化する作業です。
先にサイトマップとページの役割を決める
デザイン制作の前に、サイト全体のページ構成を示すサイトマップを作成します。そのうえで、各ページについて次の項目を整理します。
- 誰が読むページなのか
- どのような疑問に答えるのか
- 最も伝えたい内容は何か
- 閲覧後にどこへ移動してほしいか
- 問い合わせや資料請求にどうつなげるか
ページの役割が明確であれば、見出し、文章、写真、図解、ボタンなどの配置にも根拠が生まれます。
失敗4:複雑な情報を文章だけで説明する
技術力やサービスの特長を詳しく伝えようとするほど、文章量が増える傾向があります。しかし、専門用語や長文が続くページは、内容を理解する前に離脱される可能性があります。
インフォグラフィックスは、複雑な情報やデータを絵や図で整理し、ひと目で理解しやすくする表現方法です。ただし、単に文章をイラストへ置き換えるのではなく、情報を取捨選択し、誰に何を伝えるかを明確にする必要があります。
図解を活用しやすい情報
- サービスを利用するまでの流れ
- 複数サービスの関係
- 製品やシステムの仕組み
- 導入前後の変化
- 対応エリアや拠点
- 数値や実績の比較
図解、写真、動画、表を適切に使い分けることで、文章だけでは伝わりにくい内容を短時間で理解してもらいやすくなります。
失敗5:ブランド表現が媒体ごとに分断される
Webサイトだけを単独で制作すると、会社案内、製品カタログ、営業資料、展示会ツールなどと、ロゴの扱い、色、写真、メッセージがばらばらになることがあります。
実際にセザックスが支援した施工業C社の事例では、会社案内の制作を起点として、Webサイトや各種カタログまで一貫して設計し、新会社のブランド構築を支援しました。制作物を個別に考えるのではなく、企業としてどのような印象を伝えるかを共有したことが、媒体間の整合につながっています。会社案内からWebサイトまで展開した企業ブランディング事例では、限られた準備期間のなかで、資料と既存情報から仮説を立てて提案したプロセスが紹介されています。
成功の分かれ道は共通ルールを設けること
企業のブランド表現を統一するためには、少なくとも次の項目を媒体横断で整理します。
- 企業が顧客に約束する価値
- 中心となるメッセージ
- ロゴ、色、書体の使用ルール
- 写真やイラストの方向性
- 文章の語調や表記
- 商品名、サービス名、用語の統一
Webサイトと印刷物の制作会社を分ける場合でも、共通のガイドラインを共有しておくことが重要です。
失敗6:見た目を優先して読みやすさを損なう
ブランドイメージを重視するあまり、文字が小さい、背景と文字の差が小さい、装飾が多い、ボタンの位置が分かりにくいといった状態になることがあります。
読みやすさは、単に文字を大きくすれば解決するものではありません。UDフォントの設計思想では、視認性、判読性、デザイン性、可読性という複数の観点が示されています。また、読みやすい書体でも、用途に合わない太さで本文を組んだり、全体のデザイントーンと合っていなかったりすれば、使いやすい表現にはなりません。
Webサイトでも、書体だけでなく、文字サイズ、行間、余白、配色、ボタンの形状、情報のまとまりを総合的に設計する必要があります。
制作中に確認したいポイント
- 重要な見出しと本文の違いが明確か
- 文章が過度に横長になっていないか
- リンクやボタンを識別しやすいか
- スマートフォンでも操作しやすいか
- 写真の上に置いた文字を読み取れるか
- 色だけに頼らず情報を区別できるか
失敗7:公開後の更新方法を決めていない
Webサイトは公開がゴールではありません。製品情報、事例、ニュース、採用情報などを更新し続けることで、企業の現在の姿を伝えられます。
ところが、制作時に運用体制を決めていないと、「更新方法が分からない」「承認に時間がかかる」「担当者の異動後に止まる」といった問題が起こります。
公開前に運用ルールを設計する
- 更新する情報の種類
- 更新頻度と確認時期
- 原稿を作成する部署
- 内容を承認する責任者
- Webサイトへ登録する担当者
- アクセス状況を確認する頻度
- 制作会社へ依頼する作業の範囲
社内で更新する範囲と外部へ依頼する範囲を明確にし、担当者が無理なく継続できる仕組みにすることが重要です。
企業Webサイト制作を成功させる進め方
Webサイト制作の失敗を防ぐには、デザイン案を作る前の準備が欠かせません。基本的には、次の順序で進めます。
- 現行サイトの課題を整理する
- リニューアルの目的と目標を決める
- 対象となる利用者を具体化する
- 必要なコンテンツを洗い出す
- サイトマップと導線を設計する
- 原稿、写真、図版などの素材を準備する
- デザインとシステムを制作する
- 表示、操作、内容を検証する
- 公開後の更新・改善体制を整える
特に注意したいのが、原稿や写真などの素材準備です。必要な情報が社内のどこにあるのか、誰が確認するのかを早い段階で明らかにしておかなければ、制作後半でスケジュールが停滞します。
制作会社を選ぶ際のチェックポイント
制作会社を比較するときは、費用やデザイン実績だけでなく、課題整理から公開後の運用まで支援できるかを確認します。
- 企業や事業について理解するためのヒアリングがあるか
- 目的や対象者に基づいてサイト構成を提案できるか
- 原稿整理、取材、撮影、図解制作に対応できるか
- スマートフォンでの表示や操作を考慮しているか
- 更新方法や運用体制まで提案できるか
- 会社案内やカタログなど他媒体との整合を考えられるか
- 公開後の改善や保守について説明があるか
見積金額だけでは、提案の範囲や制作後の支援内容まで比較できません。何を依頼でき、何を自社で準備する必要があるのかを確認したうえで判断することが大切です。
まとめ:成功の分かれ道は制作前の設計にある
企業Webサイト制作でよくある失敗は、目的や対象者が曖昧なまま、掲載情報やデザインの検討を始めることです。
成果につながるサイトを作るには、「誰に、何を伝え、どのような行動につなげるのか」を定め、情報構成、表現、媒体間の整合、公開後の運用まで一貫して設計する必要があります。
セザックスでは、企業Webサイトの企画・制作に加え、会社案内やカタログなどの印刷物、写真、図解、動画を含めた情報発信を総合的に支援しています。Webリニューアルの目的整理や掲載情報のまとめ方にお悩みの場合は、お気軽にご相談ください。
