Webと印刷物の役割を分け、同じ顧客体験として設計することが、クロスメディア戦略を成功させるポイントです。

この記事でわかること

  • Webと印刷物を一体活用するクロスメディア戦略の考え方
  • 印刷物からWebへ顧客を誘導する導線の設計方法
  • チャネルごとに情報を使い分けるポイント
  • 印刷物ならではの体験価値を高める方法
  • 制作・運用を効率化するための情報管理の考え方

クロスメディア戦略とは

クロスメディア戦略とは、Webサイト、カタログ、会社案内、チラシ、動画、SNSなど、複数の媒体を連携させて顧客との接点を設計する取り組みです。

単に同じ情報を複数の媒体へ掲載するのではありません。それぞれの媒体が得意とする役割を割り当て、顧客が次の行動へ進みやすい流れをつくることが重要です。

例えば、展示会で配布する会社案内では事業の全体像を伝え、QRコードからWebサイトへ誘導し、Web上で詳しい製品仕様や導入事例、問い合わせフォームを案内します。このように、印刷物とWebを一連の体験として設計することで、情報提供から比較検討、問い合わせまでの流れを滑らかにできます。

Webだけ、印刷物だけでは顧客体験が途切れやすい

Webは情報の更新性や検索性に優れています。一方、印刷物は直接手渡せることや、一覧性、保存性、質感による印象形成に強みがあります。

どちらか一方だけで顧客とのコミュニケーションを完結させようとすると、媒体の弱点が表面化します。印刷物にすべての情報を載せれば情報量が増え、読み手が要点をつかみにくくなります。反対にWebだけでは、展示会や営業訪問などの対面接点で、企業の特徴を短時間に伝えるツールが不足することがあります。

施工業C社の事例では、新会社の会社案内を起点として、Webサイトやカタログなどのツールを一体的に制作しました。個別の制作物をばらばらに発注するのではなく、企業イメージを共有したうえで各媒体へ展開したことが、ブランド構築につながっています。詳しくは会社案内からWeb・カタログへ展開した企業ブランディング事例をご覧ください。

顧客体験を高めるクロスメディア設計の進め方

1.媒体ではなく顧客の行動から設計する

最初に決めるべきなのは、「どの媒体を作るか」ではなく、「顧客にどのような行動を取ってもらうか」です。

認知、興味、比較検討、問い合わせ、購入、継続利用といった顧客の行動を整理し、それぞれの段階で必要な情報と適切な媒体を割り当てます。

顧客の段階印刷物の役割Webの役割
認知店頭POP、DM、チラシなどで注意を引く広告やSNSで接点を広げる
興味会社案内やリーフレットで概要を伝える動画や事例ページで理解を深める
比較検討カタログで製品を一覧化する最新仕様、詳細条件、関連情報を提供する
問い合わせQRコードや連絡先を明示するフォームや予約画面で行動を受け付ける
継続利用マニュアルや同梱物で利用を支援するFAQや更新情報を提供する

各媒体の目的が明確になれば、掲載する情報の優先順位も決めやすくなります。

2.印刷物には「次の行動」を明示する

印刷物を配布するだけでは、顧客が読んだ後に何をすればよいのか分からない場合があります。Webと連携させる際は、次に取ってほしい行動を具体的に示しましょう。

  • 製品の詳細仕様を見る
  • 導入事例を確認する
  • 動画で使用方法を見る
  • 資料をダウンロードする
  • 問い合わせや見積もりを申し込む

QRコードを掲載する場合も、コードだけを配置するのではなく、「導入事例を見る」「30秒の紹介動画を見る」など、アクセス後に得られる情報を添えることが重要です。

また、すべての印刷物を同じURLへ誘導するのではなく、展示会、営業資料、DMなど、接点ごとに遷移先を分けると効果を測定しやすくなります。

3.印刷物とWebで情報の深さを分ける

印刷物とWebへ同じ情報をそのまま掲載すると、それぞれの媒体の強みを生かせません。

印刷物では、顧客が短時間で全体像を理解できるように、情報を選び、整理することが必要です。Webでは、詳細な仕様、事例、FAQ、動画など、比較検討に必要な情報を段階的に提供します。

例えば製品カタログでは、主要な特徴や製品体系を一覧化し、最新の価格、在庫、詳細仕様など更新頻度の高い情報はWebへ誘導します。印刷物の情報量を抑えながら、必要な情報へ到達できる設計です。

印刷物ならではの体験価値をWebへの入口にする

クロスメディア戦略における印刷物は、Webへ誘導するための単なる告知媒体ではありません。手触り、厚み、形状、光沢など、画面では再現しにくい体験を提供できます。

例えば箔押しは、熱と圧力によって金属箔を素材へ転写する加工です。立体感やメタリックな光沢が得られるため、カタログのロゴや表紙など、特に印象づけたい部分に利用できます。ただし、型を使用するため微細な表現が難しく、薄い用紙では裏面に押圧の跡が残る場合があります。加工の特徴と制約を理解して選定する必要があります。詳しくは箔押しやエンボスなどの特殊加工をご覧ください。

印刷面を保護する表面加工も、顧客体験に影響します。OPニスはコストと納期を抑えやすく、PP加工は耐水性や耐摩擦性に優れています。長期間使用するカタログ、持ち運ぶ冊子、店頭で繰り返し触れられるツールなど、使用環境によって適切な加工は異なります。表面加工ごとの特徴を踏まえ、見た目だけでなく使用期間や耐久性も考慮しましょう。

仕上がりサイズも印象や使い勝手を左右します。定型のA判・B判だけでなく、広報誌で使われるタブロイド判や、海外向け資料で使用されるレターサイズなど、用途に応じた選択肢があります。例えば官製はがきは100×148mmであり、A6の105×148mmとは短辺が異なります。媒体の用途や配布方法まで考慮して設計することが大切です。詳しくは印刷物の仕上がりサイズをご確認ください。

媒体間でブランドの一貫性を保つ

Webと印刷物を別々の担当者や制作会社が制作すると、ロゴの扱い、色、写真、表現、情報構造が媒体ごとに変わることがあります。

顧客が会社案内からWebサイトへ移動した際に、見た目やメッセージが大きく異なると、別の企業やサービスのような印象を与えかねません。

制作前に、ロゴ、コーポレートカラー、書体、写真の方向性、見出し表現、用語などの共通ルールを整理しましょう。そのうえで、すべての媒体を同じデザインにするのではなく、媒体の閲覧環境に合わせて最適化します。

重要なのはデザインを完全にそろえることではなく、どの接点でも同じ企業らしさや価値が伝わる状態をつくることです。

紙とデジタルの情報を一元管理する

製品数や対応言語が増えると、紙のカタログ、Webサイト、営業資料などに掲載する情報の管理が複雑になります。媒体ごとにデータを作成すると、修正漏れ、表記揺れ、古い画像の使用といった問題が起こりやすくなります。

部品メーカーD社の事例では、2,000ページ以上の製品カタログ制作に対し、XMLを活用した自動組版システムを導入しました。翻訳ツールを組み込んで多言語展開を可能にするとともに、製品写真やカタログデータを画像管理システムで一元管理しています。その結果、翻訳時間とコストの削減や、各国向け販促物の品質管理、データ活用の効率化につながりました。詳しくは大規模カタログの自動組版・多言語化事例をご覧ください。

クロスメディア戦略を継続的に運用するには、印刷物とWebを別々の制作物として管理するのではなく、商品情報、画像、翻訳文、仕様などを共通の情報資産として扱う視点が必要です。

クロスメディア施策の効果を測定する

施策を改善するためには、印刷物を配布して終わりにせず、その後の行動を計測できるようにします。

  • 媒体別・配布場所別のQRコードアクセス数
  • 専用ページの閲覧数や滞在時間
  • 資料ダウンロード数
  • 問い合わせや見積もりの件数
  • 展示会後の商談化率

例えば同じ会社案内でも、展示会用、営業訪問用、郵送用でQRコードやURLを分ければ、どの接点からWebへ移動したのかを把握できます。

ただし、QRコードの読み取り数だけで成果を判断するのは適切ではありません。アクセス後に問い合わせや商談へつながったかまで確認し、媒体、導線、遷移先コンテンツを一体で改善することが重要です。

クロスメディア戦略でよくある失敗

制作物を増やすことが目的になる

Webサイト、動画、カタログなどを一度に制作しても、各媒体の役割が決まっていなければ顧客体験はつながりません。顧客の行動と媒体の目的を先に整理しましょう。

印刷物からの誘導先がトップページだけ

トップページへ誘導すると、顧客が目的の情報を再び探さなければなりません。印刷物の内容に対応した製品ページ、事例ページ、動画、問い合わせフォームなどへ直接案内します。

媒体ごとに情報が食い違う

価格、仕様、サービス名称、画像などが媒体間で異なると、顧客の不安につながります。更新頻度の高い情報はWebへ集約し、紙とデジタルで共有する情報の管理ルールを定めることが必要です。

成果を確認する仕組みがない

効果測定の方法を制作後に考えると、媒体ごとの成果を判別できないことがあります。専用URLやQRコード、問い合わせ項目などを企画段階から設計しましょう。

Webと印刷物を一つの顧客体験として設計しよう

クロスメディア戦略では、Webと印刷物を単に併用するのではなく、顧客の行動に沿って役割を分担させることが重要です。

印刷物で企業や商品の魅力を直感的に伝え、Webで詳細情報や最新情報を提供し、問い合わせや購入などの行動につなげます。さらに、ブランド表現と情報資産を共通化し、媒体別の成果を測定することで、継続的な改善が可能になります。

セザックスでは、Web制作と印刷物制作に加え、デザイン、動画、システムなどを含めたクロスメディア施策を一体的に支援しています。複数媒体の役割整理や情報管理、制作体制に課題がある場合は、お気軽にご相談ください。