カタログを作り終えたあと、
「悪くはないと思うのだけどな……」
そんな感覚が、じんわりと湧いてくることありませんか?

製品情報は揃っているし、写真も用意した。
社内の確認も通っているし、指摘もほとんどなかった。

それなのに、営業からは
「これ、結局説明が必要だよね」
と言われてしまう。作った側としては、少し引っかかります。
間違ったことはしていないはずなのに、どこか“伝わり切っていない”感じがする。

この違和感、デザインが下手だったからでも、写真が弱かったからでもないことがほとんどです。
もっと手前の、設計の部分でつまずいているのです。
そういうケースを、私たちは何度も見てきました。
多くの場合、原因は構図と導線がはっきり決まらないまま、制作が進んでしまっていることにあります。

カタログは、最初から丁寧に読まれるものではありません。
実際の現場では、パラっとめくられて、気になるところだけ拾われて、合わなければそのまま閉じられてしまっています。
その前提に立たずに作ると、どれだけ情報を詰めても、記憶にほとんど残らずに終わってしまいます。

この記事では、“カタログ デザイン”というテーマで、ベテランのデザイナーが“あまり言葉にしないけれど、実際にはかなり意識している”構図と導線の考え方を、できるだけ現場の感覚に近い形で整理していきます。
正解を並べるというより、「だから、あのとき伝わらなかったのかもしれない」そう振り返るための材料として、読んでもらえたらと思います。

カタログが「正しいのに伝わらない」とき

伝わらないカタログを見ていると、「説明としては、すごく正しい」ことが多いです。

スペックも、実績も、必要な情報は一通り載っている。
突っ込まれそうなところも、あらかじめ潰してある。
間違いはない。
でも、印象には残らない。

こういうとき、制作側はだいたい同じところで立ち止まります。
「どれを削ればいいのか分からない」、というところです。

広報は、ブランドのトーンを崩したくない。
営業は、商談で使える具体性がほしい。
技術は、正確さを優先したい。

それぞれの言い分は、どれももっとも。
だからこそ、全部を載せる方向に傾きやすいのです。

結果として、“正しいけれど、読まれないカタログ”が出来上がります。
もう一つ、よくあるのが「誰が、どんな状況で見るのか」ということが、最後まで曖昧なまま進んでしまうケースです。

展示会で立ったまま見る人。
商談中に机で広げる人。
後日、社内で一人で読み返す人。

同じカタログでも、見方も、使われ方も、まったく違います。
そこが定まらないまま、原稿が集まり、写真が入り、最後にレイアウトで何とかしようとする。

伝わらなくなる原因は、デザインの良し悪し以前に、「考える順番」にあることも少なくありません。

制作現場イメージ

ベテランが最初に考えていること

経験のあるデザイナーは、いきなりレイアウトを組み始めたりしません。
最初に考えているのは、「これ、どこから見られるだろうか」ということです。

表紙なのか。
最初の見開きなのか。
営業が説明の途中で、自然に開くページなのか。

最初に視線が止まる場所を決めないまま作り始めると、すべてのページが同じトーンになります。
結果として、どこも記憶に残らないカタログになってしまいます。
いきなり説明から入らないのも、その延長線上にあります。
読むかどうかは、内容以前に「最初の数秒」で決まる。
この感覚は、現場を経験している人ほど強いです。
もう一つ、よくやっているのが、「説明しない」という判断です。
情報を削るのは、正直怖い。
あとから「なぜこれを載せなかったのか」と聞かれる可能性もあります。
それでも全部載せた結果、結局どれも伝わらないなら意味がない。

「ここから先は営業で話す」
「詳しい部分はWebで補足する」
そう役割を切り分けることで、カタログは一気に扱いやすくなります。

そもそもカタログは、“読むもの”というより、“眺められるもの”です。
流し見される前提に立つと、構図の考え方も自然と変わってきます。

構図とレイアウトで起きやすいズレ

伝わるカタログには、必ず「ここを見てほしい」というポイントがあります。
写真なのか、コピーなのか。
あるいは、その組み合わせなのか。
すべてを目立たせようとすると、結局どこも目立たなくなります。
写真を詰め込みすぎて、一枚一枚の印象が薄れる。
これは、本当によくある失敗です。

ベテランが意識しているのは、「語らせる写真」と「説明する写真」を分けること。
役割を分けるだけで、構図はかなり整理されます。

また、ページ単位ではなく、見開き単位で考えることも多いです。
「ここを開けば、これが分かる」状態を作るということです。
展示会や営業の現場では、数秒で理解できるかどうかが重要です。
見開きに役割を持たせることで、カタログは“使われるもの”になります。
情報の強弱も同じです。
すべてを同じ声量で語らない。
読み手が、どこを拾うかを選べる余地を残す。
それが、結果的に理解を深めます。

導線を意識すると見えてくること

ページの順番を、なんとなく決めていないでしょうか。
いきなり機能説明から始まると、読む側は置いていかれます。
まずは背景や課題があって、その流れで製品が出てくる。
それだけで、納得感は変わります。
営業が説明しやすいカタログには、必ず「ここを開いて話す」ページがあるものです。
逆に、説明を増やしてしまうカタログもあります。
その違いは、机上ではなく、現場で表れます。
最近は、Webや動画との連動も前提になってきました。
カタログですべてを説明しなくてもいい。
印刷は、全体像を伝える。
Webは、深掘りを担う。
役割を分けたほうが、結果的に伝わります。

構図と導線を外に頼るという選択

ここまで読んで、「たしかに言われてみれば、そうかもしれない」と感じた部分が、一つでもあれば十分です。
実際、相談を受ける中でも、最初から「こうしたい」と整理されているケースは多くありません。
むしろ多いのは、
「何か違和感はあるけれど、うまく言葉にできない」
「今のカタログが悪いわけじゃない。ただ、手応えがない」
そんな状態です。
構図や導線の話は、原稿が固まってからだと、選択肢が一気に減ります。
一方で、「まだ方向性がぼんやりしている」段階だからこそ、できる整理もあります。
全部を決めなくてもいい。
いきなり作り直さなくてもいい。
まずは、
「どこで伝わらなくなっていそうか」
「営業が説明しづらいのは、どのページか」
そのあたりを、一緒に言葉にしてみるだけでも、次の判断はかなり楽になります。

いま作ろうとしているカタログ。
もし少しでも引っかかりが残っているなら、形になる前のタイミングで、一度立ち止まってみるのも、遠回りではありません。

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