「これ、ちゃんと伝わってるのかな…」と思ったこと、ありませんか?
パンフレットをつくるとき、私たちは「伝えたいこと」がたくさんあります。
介護保険の仕組みや就学支援制度の説明、イベントの開催案内、おすすめポイントなどなど・・・「伝えたい情報」はたくさんあります。でも、作ったあとにふと、こんな疑問がよぎることってありませんか?
「あれ、これって本当に読まれてる?」
「もしかして、難しすぎたかな…?」
とくに福祉施設や学校、行政の現場では、読み手の背景や立場がさまざまで、誰に向けて書けばいいのか迷うこともあると思います。丁寧につくったつもりなのに、「ちょっと難しかった」「読む気が起きなかった」という声が届くと、やっぱりショックですよね。
そういうとき、「内容のせいかな」と思うこともあるかもしれません。でも実は、“伝わらない原因”の多くは、ちょっとした工夫不足にあることが少なくありません。
たとえば:
- 文字が小さすぎて目が疲れる
- 行間が詰まっていて読みにくい
- 専門用語が多くて意味が取りにくい
- 色づかいやレイアウトが目にチカチカする
…こういった“些細なつまずき”が、読者の心をスッと遠ざけてしまうこと、よくあるんです。
「誰もが読める パンフレット 」って、どんなもの?
この記事では、「ユニバーサルデザインの視点から、パンフレットをもう一度見直す」ことをテーマにしています。
難しいことを言うつもりはありません。
必要なのは、特別なスキルよりも、読み手に対する“ちょっとした想像力”かもしれません。
「このパンフレット、80代の方が手に取ったらどう感じるかな?」
「外国籍の保護者が読んだとき、ストレスを感じないかな?」
「目が見えにくい方でも、ちゃんと情報が拾えるかな?」
そんなふうに“もう一人の自分”になって考えてみることが、じつはユニバーサルデザインのスタート地点です。
なぜ今、「 パンフレット に ユニバーサルデザイン 」が必要なのか
届かなければ、伝えたことにならない
パンフレットは「伝える」ためにあります。でも、それが読み手に届かなければ、伝えたことにはならない。あたりまえのことなんですが、つくる側に回るとつい見落としがちです。
制作の現場では、「とにかく全部の情報を入れなきゃ」となってしまいがちです。でもそれって、たとえば荷物がぎゅうぎゅうに詰まったカバンのようなもの。たしかに中身は多いけれど、取り出すのが面倒で、結局使われなくなることも多い。
パンフレットも同じで、「読む気が起きない」時点で、その情報は“なかったこと”と同じなんですよね。
社会の変化と、伝え方の見直し
高齢化が進み、外国人居住者も増え、視覚・認知の多様性も広がっています。
情報を届ける相手が、以前よりずっと“いろんな立場の人”になっていることを、私たちは日々実感しています。
それに対して、パンフレットや資料の“伝え方”って、あまり変わっていないことが多い。
昔ながらのテンプレや形式に頼ったまま、「届ける工夫」が置き去りになっている。
これ、けっこう根深い課題です。
たとえば:
- 白地にグレー文字でおしゃれに見せたつもりが、実際は“読めない”デザインに
- 「サービス名」は知っていても、その中身が“なんとなく”しか理解されていない
- 英語表記を加えたけど、言い回しが逆に難しくなってしまった
ユニバーサルデザインは、こうしたズレに気づき、“伝え方を見直すきっかけ”にもなります。
読み手に寄り添うとはどういうことか?
「わかりづらい」って、どんな感じ?
読みやすさの話になると、「フォントサイズが小さい」「漢字が多い」「行間が狭い」など、よくあるチェックポイントが挙げられます。
でも実は、その前に考えておきたいことがあるんです。
それは――「そもそも読み手は、どこでつまずいているのか?」という視点。
つくる側からすると「ちゃんと書いたし、見出しもあるし、説明もした」と思っていても、読み手からすると「どこを読めばいいのか分からない」「なんだか難しそう」と感じて、ページをめくる前に心が離れてしまっているかもしれません。
こういう“無意識の離脱”って、意外と多いんです。
たとえば、ある高齢者の方がこんなことを言っていました。
「最初の1行を読んでわからなかったら、もう読むのをやめちゃうの。疲れるから」
このひと言、重たいですよね。つまり、「わかりづらい」は、“伝わらない”のスタートラインなんです。
それに気づくことが、「寄り添うデザイン」の第一歩になります。
高齢者、視覚障がい者、外国人…それぞれの“読みづらさ”
ユニバーサルデザインというと「すべての人に優しく」と言いますが、
具体的にどんな読み手がいて、何に困っているのかを想像できると、デザインの工夫もしやすくなります。
■ 高齢者の方の場合
- 小さな文字が見えにくく、すぐに目が疲れてしまう
- 長文が続くと、どこまで読んだか分からなくなってしまう
- 横文字や専門用語が多いと、意味がつかみにくい
読みやすくするには、フォントサイズを14pt以上にするだけでも大きな差になります。
見出しと本文にしっかり差をつける、行間をゆったり取るだけで、「読みやすい」と感じてもらえる確率がグッと上がります。
■ 視覚障がいがある方の場合
- コントラストが弱いと、文字が背景に溶けてしまう
- 色の組み合わせによっては、見分けがつかなくなる(赤と緑など)
たとえば、配色を考えるとき、「これはオシャレだな」よりも「これ、ちゃんと見えるかな?」という観点を加えるだけで、まったく違うパンフレットになります。
Webでも推奨されている明暗比(コントラスト比)4.5:1以上の考え方は、紙媒体にも十分活かせます。
■ 外国人や日本語に不慣れな方の場合
- 難しい漢字が続くと、内容がつかめない
- 行政用語や業界用語が、直訳では意味が通じない
- 漢字だけの文章は、全体的に「圧」が強くて読む気になれない
この場合、「やさしい日本語」を使う工夫が効果的です。
たとえば「高齢者支援の拡充を目的とした施策」よりも、「お年寄りを助けるための新しい取り組み」の方が、ずっと親しみやすくなりますよね。
パンフレット は「読んでもらえる」ではなく、「読もうと思ってもらう」ために
パンフレットに限らず、チラシやWebページでも共通することですが、
「伝える」って、読み手が“読もう”と思ってくれないと成立しないんです。
読もうと思ってもらうには、「なんか気になる」「これは自分に関係あるかも」と感じてもらう必要があります。それは、中身の良し悪しよりも、第一印象や“読みやすさの空気感”が大きく左右します。
だからこそ、ユニバーサルデザインの工夫は、単なる“装飾”ではなくて――
「あなたに届けたい」という姿勢そのものなんだと思います。
文章を少し短くして、余白を増やしてみる。
イラストを添えて、安心感を足してみる。
そのひとつひとつが、読者の「読んでみようかな」という気持ちにつながっていくのです。
パンフレットに活かせるユニバーサルデザインの工夫
「読みやすさの工夫」と聞くと、フォントや配色の話を思い浮かべる方も多いかもしれません。
でも実は、“読み手の立場”に立って考え抜いた結果としてのデザインが、真のユニバーサルデザインです。
ここでは、制作現場でもすぐに取り入れやすい実践的な工夫をいくつか紹介します。
文字・配色・レイアウトの基本を見直す
■ フォントサイズは、思っているより「大きめ」でちょうどいい
- 基本は14pt以上(高齢者向けなら16〜18ptも検討)
- 文字が読みやすい=「目にやさしい」「情報に入りやすい」
- 小さな文字はオシャレではなく、“読まれない”原因になることも
よく「たくさん情報を入れたいから文字を小さくする」という判断がされますが、
それは「伝えたい」という気持ちが、結果的に「伝わらない」につながる残念なケースです。
読みやすさは“読み進めたくなる動機”になります。
■ 配色は「色の意味」より「色の見え方」を重視する
- 白背景×黒文字がもっとも安心感がある配色
- 装飾カラーを使うときは、色覚多様性(特に赤×緑)に配慮
- コントラスト比(明暗の差)は 4.5:1以上 を目安に
たとえば、文字色が薄いグレーで背景も淡色だった場合、
視力が落ちている人には「そこに文字があること自体が見えない」こともあります。
伝えたいなら、“見えるように”つくる必要があるんです。
■ レイアウトは「読む流れ」を邪魔しない設計に
- 1行の文字数は 35~40字前後 に収める(目線の負担を減らす)
- セクションを見出しでしっかり区切り、情報の塊をつくる
- 行間を1.5〜1.8倍程度にとると、呼吸しながら読める感覚に
余白を「もったいない」と思っていませんか?
じつはその余白こそが、“読む余裕”をつくってくれる存在なんです。
見せたいものを詰め込むより、伝えたいことが届く空間づくりを意識してみてください。
ユニバーサルフォントやピクトグラムを活用する
■ 見えやすさを整える「ユニバーサルフォント」

「UDフォント」や「UDデジタル教科書体」など、視認性に配慮したフォントが注目されています。
たとえば:
- 「1(イチ)」と「I(アイ)」がしっかり区別できる
- 漢字の部首や払いが太く、判別しやすい
- 点や濁点が潰れず、読み間違いを防げる
紙の資料ではフォント選びが軽視されがちですが、文字の“骨格”が読み手の安心感を支えていること、意外と多いんです。
■ ピクトグラムは「言葉の壁」を越える橋になる
たとえば:
- トイレ/駐車場/多言語対応/手話OK/バリアフリー対応 など
これらの情報を、アイコンひとつで伝えると、
「読む前から内容が伝わってくる」感覚をつくることができます。
特に日本語に不慣れな方や、読み書きが難しい方にとって、ピクトグラムは“安心のサイン”になります。
事例に見る、改善で変わったパンフレット
セザックスでは、ある福祉団体からこんな相談をいただいたことがあります。
「せっかく情報を詰めたのに、誰にも読まれていない気がするんです…」
実際のパンフレットを拝見すると、
- 文字が小さく、ぎゅうぎゅうに詰まっていた
- カラーの多用で目がチカチカする
- 内容は親切でも、最初の印象で“読む気がしない”状態でした
そこで以下の提案を行いました:
- 情報を3割カットし、「本当に必要なこと」だけを厳選
- 段落ごとにピクトグラムを添えて、視覚的に“区切り”を演出
- フォントと行間を見直し、やさしいリズムで読めるように調整
結果、読み手からの問い合わせが増え、職員の方からも「読んでもらえるって、こういうことだったんですね」と実感の声をいただけました。
制作現場で起こりがちなジレンマと向き合う
「かっこよさ」と「伝わりやすさ」は、両立できるのか?
デザインの現場ではよく、「見た目の良さ」と「読みやすさ」がぶつかります。
とくにパンフレットのように情報量が多いものは、
「きれいに見せたい」気持ちと、「ちゃんと伝えたい」気持ちがせめぎ合う瞬間がたくさんあるんですよね。
たとえば、こういうやり取り。
「この文字、ちょっと大きすぎない?」
「でも、これ以上小さくすると、読みにくくなりますよ」
「うーん、じゃあ、ページをもう1枚増やせるか聞いてみますか?」
こんなふうに、ビジュアルのバランスと可読性のせめぎ合いは、プロの現場でも日常茶飯事です。
かっこいい=伝わる、とは限りません。
むしろ、かっこよさを優先した結果、「読みにくい」「疲れる」と感じさせてしまっては本末転倒です。私たちがよく伝えているのは、“見せたい”ではなく“伝えたい”を軸に据えようということ。
そのうえで、必要な装飾・余白・アクセントを丁寧に選んでいく。
そうすることで、「かっこいいのに、読みやすい」デザインができるようになります。
「時間」「お金」「チェック体制」が足りない現実
もうひとつ、忘れてはならないのが現場の制約です。
- パンフレット制作にかけられる予算が限られている
- 複数部署が関わっていて、スケジュールが押しがち
- 校閲や内容チェックをする人が決まっていない
こうした状況の中で、「ユニバーサルデザインを完璧に…」なんて言われたら、
正直、うんざりしてしまうのも無理はありません。
でも、全部を完璧にやらなくてもいいんです。
「いまできる範囲で、読み手に近づく」ことが大事なんです。
たとえば:
- テンプレートの時点でフォントサイズを決めておく
- 色の使い方にルールを設けて迷いを減らす
- 内容チェックのフローに「第三者の視点」を1回だけ入れる
ほんの少しの工夫で、パンフレットの伝わり方は大きく変わります。
それに、「今はここまでしかできない」という判断も、十分に立派な“寄り添い”です。
「正解」はない。だからこそ、対話が必要
ユニバーサルデザインって、「こうすれば絶対OK」という正解があるわけではありません。
読む人も違えば、環境も違う、伝えたい内容も違う。
だからこそ、現場ごとに「何を大切にするか」を話し合うことが大事なんです。
たとえば、ある行政機関では、職員・外注デザイナー・福祉関係者が一緒にワークショップを行い、
「この資料は、誰に何を届けたいのか?」を整理してから制作に入りました。
このような“対話の工程”があるだけで、読み手への目線がガラッと変わる。
結果として、情報が整理され、無駄な要素が削られ、伝えたいことだけがちゃんと届くようになっていく。
外部パートナーとの協働で実現する伝わるパンフレット
視点の違うプロと組むと、見えてくることがある
どれだけ丁寧につくっても、自分たちだけで見ていると“当たり前”になってしまう視点ってあるんですよね。
「社内の言葉が通じる人たち」で作業が完結していると、
読み手の“つまずき”に、なかなか気づけないものです。
そこでおすすめしたいのが、外部パートナーとの協働です。
デザインや印刷のプロに相談すると、
- 「この言葉、現場では伝わりにくいかもしれません」
- 「この配色、色覚に配慮すると別の方が安心ですよ」
- 「この見出し、もっとシンプルにできます」
…といった気づきを得ることができます。
自分たちにとって“見慣れたパンフレット”が、
初めて目にする人にどう映るか?を冷静に教えてくれる存在。
それが、外部パートナーの価値です。もちろん、丸投げするのではなく、目的や意図を共有しながら一緒に作っていくのが前提。
その関係性の中でこそ、「伝わるパンフレット」は育ちます。
セザックスの事例:福祉施設との協働から
ある福祉施設から、こんな相談が寄せられました。
「パンフレットを配っても、読まれている感じがしなくて…
でも、どこを直せばいいのか分からないんです」
内容はしっかりしていました。
ただ、文字が詰まりすぎていたり、専門用語が目立っていたりと、“読む前に疲れてしまう要素”がいくつか見受けられました。
セザックスでは、以下のような対応を行いました。
- 重要な箇所だけを色付き見出しで整理
- 内容の再構成を行い、「誰に」「なにを」届けるのかを明確化
- フォント・行間・イラストを最適化して視線誘導を強化
- 職員・デザイナー・利用者の視点を交えたフィードバック会を実施
結果、「読みやすくなった」「ちゃんと伝わっている感じがする」と、利用者からの反応が増えたそうです。担当職員の方も、「内容は変えていないのに、反応が変わった」と驚かれていました。

セザックスの デザインサービスも是非ご覧下さい!
まとめ|届けたい想いが、ちゃんと届くために
パンフレットは、ただの“紙の情報”じゃないと思うんです。
そこには「誰かにちゃんと伝えたい」という気持ちが込められている。
だからこそ、読み手のことを少しでも想像できたら、それはもう“ユニバーサルデザインの第一歩”だと思います。
完璧じゃなくてもいい。
でも、「もしかしたら読みにくいかも」という気づきから始めてみる。
「少しだけ、読み手の目線で見直してみよう」と考えてみる。
それだけでも、パンフレットは大きく変わっていきます。
私たちは、“伝える”から“届く”へ変えるお手伝いをしています。
あなたのつくる情報が、ちゃんと誰かに届くように。
そんなお手伝いができたら、嬉しく思います。