成功するデータ管理には、情報の一元化だけでなく、制作ルールの標準化と再利用を前提にした仕組みづくりが必要です。

この記事でわかること

  • 大手企業がデータ管理を見直すべき理由
  • データの属人化や重複が起こる原因
  • ワンソース・マルチユースを実現する方法
  • 大量の製品情報や翻訳データを管理するポイント
  • データ管理システムを導入する際の進め方

大手企業におけるデータ管理の課題とは

製品マニュアルやカタログを継続的に制作している企業では、原稿、画像、図面、翻訳文、レイアウトデータなど、さまざまな情報が蓄積されていきます。製品数や対象言語、使用媒体が増えるほど、データ管理は複雑になります。

特に注意したいのが、同じ情報を部門や制作会社ごとに別々の形式で管理している状態です。保管場所やファイル形式、表記ルールが統一されていないと、更新のたびに情報を探し直したり、複数のデータを修正したりする必要があります。

こうした状態では、担当者が必要な情報を把握していても、異動や退職によって運用が滞る可能性があります。データが存在しているだけでは、組織として管理できているとはいえません。

データが分散すると起こりやすい問題

  • 最新データがどれなのか判断できない
  • 同じ内容を媒体ごとに修正している
  • 制作会社によってデータの作り方が異なる
  • 過去の原稿や画像を再利用できない
  • 翻訳済みの文章を再び翻訳している
  • 担当者以外がデータの場所や意味を把握できない

データ管理を改善するには、単にサーバーやクラウドへファイルを集約するだけでなく、情報の作り方、更新方法、利用方法まで設計する必要があります。

成功するデータ管理を支える3つの考え方

1.情報の作成ルールを標準化する

データ管理の第一歩は、情報をどのようなルールで作成するかを決めることです。ファイル名やフォルダー構成だけでなく、原稿の記入方法、用語、表記、画像の登録方法なども対象になります。

通信業A社の事例では、製品マニュアルの制作会社によって作り方が異なり、他媒体へ展開する際に大きな負荷がかかっていました。そこで、制作ルールと原稿記入用フォーマットを整備し、情報を再利用しやすい制作工程へ変更しています。

この取り組みにより、テキストデータから印刷物を制作できるようになり、DTP作業の削減、品質の均一化、Webやアプリへの展開につながりました。詳しくは、製品マニュアルのワンソース・マルチユース化事例で紹介しています。

重要なのは、システムを導入する前に制作ルールを整理している点です。入力される情報が統一されていなければ、管理システムを導入してもデータのばらつきは解消されません。

2.データとレイアウトを分けて管理する

印刷物の制作データだけを保管していると、掲載されている文章や製品情報を別の媒体で利用しにくくなります。レイアウトの中に情報が埋め込まれているため、再利用する際にコピーや再編集が必要になるからです。

そこで有効なのが、文章、仕様、画像などの情報と、紙面や画面のデザインを分けて管理する考え方です。元となる情報を一元管理し、出力先に応じてレイアウトを適用すれば、同じ内容を印刷物、Web、アプリなどへ展開できます。

セザックスのマニュアル制作では、原稿の執筆前に使用する用語や表記ルールを定め、原稿と画像を編集して各媒体へ展開します。必要に応じて、1つのデータから印刷用とWeb用を出力するワンソース・マルチユースにも対応しています。制作工程の詳細は、マニュアルができるまでの工程をご覧ください。

3.更新と確認の工程まで仕組み化する

データを一元化しても、誰が、いつ、どのように更新するかが決まっていなければ、次第に情報が古くなります。登録時だけでなく、更新、承認、公開までのワークフローを決めることが重要です。

マニュアル制作では、仕様書や図面などの資料間に食い違いが見つかることがあります。そのため、原稿作成後には不明点の問い合わせ、内容確認、修正結果の再確認が必要です。編集前後の差分や表記ゆれを専用システムで確認する方法もあります。

データ管理システムにも、登録者、承認者、更新履歴、公開状態などを管理する機能を持たせると、誤った情報の利用や修正漏れを防ぎやすくなります。

大量の製品データを一元管理した企業事例

データ管理の効果が表れやすいのが、多数の製品を扱うカタログやマニュアルです。ページ数、製品点数、画像点数、対応言語が増えるほど、手作業による管理には限界が生じます。

部品メーカーD社では、2,000ページを超える製品カタログの制作が大きな負担となっていました。さらに海外展開に伴い、各国語版のカタログを効率的に制作する必要がありました。

そこで、XMLを活用した自動組版システムに翻訳ツールを組み込み、製品情報を多言語へ展開できる仕組みを構築しました。加えて、膨大な製品写真と各国語版のカタログデータを管理する画像管理システムも導入しています。

その結果、カタログの多言語化にかかる時間とコストの削減だけでなく、品質確認や販促用途へのデータ活用にもつながりました。詳しくは、2,000ページカタログの多言語化事例で紹介しています。

ワンソース・マルチユースがデータ管理に有効な理由

ワンソース・マルチユースとは、元となる情報を一つにまとめ、複数の媒体や用途へ展開する方法です。

例えば、製品名、仕様、注意事項、操作手順などを構造化して管理すれば、紙のマニュアルだけでなく、Webマニュアル、アプリ内ヘルプ、FAQ、営業資料などにも利用できます。

従来の管理ワンソース・マルチユース
媒体ごとに原稿を作成する共通データから各媒体へ出力する
同じ修正を複数回行う元データを修正して各媒体へ反映する
表記が媒体ごとに異なる共通の用語・表記ルールを適用する
過去データを探して流用する必要な情報を検索して再利用する
レイアウト変更に時間がかかる出力テンプレートを変更して対応する

ただし、すべての情報を最初から細かく構造化すると、設計や登録の負担が大きくなる場合があります。どの情報を、どの媒体で、どの程度再利用するのかを整理したうえで、管理単位を決めることが重要です。

翻訳データを管理するときのポイント

多言語マニュアルや海外向けカタログでは、日本語の原稿だけでなく、各言語の翻訳文も管理する必要があります。

翻訳データを案件ごとのファイルとして保管するだけでは、過去に翻訳した文章や用語を再利用できません。製品名や機能名の訳し方が案件によって変わると、品質にもばらつきが生じます。

翻訳を効率化するには、少なくとも次の情報を管理対象として整理します。

  • 原文と翻訳文の対応
  • 製品名や専門用語の対訳
  • 使用を避ける表現
  • 言語ごとの表記ルール
  • 翻訳済み・確認中・承認済みなどの進行状況
  • 原文変更時の翻訳更新履歴

翻訳支援ツールや用語集を活用すると、過去の翻訳資産を再利用しやすくなります。ただし、ツールを導入するだけでは品質は安定しません。原文の書き方や用語を統一し、翻訳しやすいデータを作ることも必要です。

データ管理システム導入の進め方

ステップ1.現在のデータと制作工程を調査する

まず、どの部署が、どのようなデータを、何の目的で使用しているかを確認します。ファイルの種類や保管場所だけでなく、情報を作成してから公開するまでの流れも調査します。

特に、担当者が手作業で補っている工程や、同じ内容を何度も入力している工程は、改善効果が出やすいポイントです。

ステップ2.管理対象と再利用範囲を決める

すべてのデータを一度に管理しようとすると、システムが複雑になりやすいため、優先順位を付けます。

例えば、更新頻度が高い製品仕様、複数媒体で使用する注意事項、点数の多い製品画像などから対象にすると、導入効果を確認しやすくなります。

ステップ3.入力ルールと権限を設計する

データの項目、入力形式、必須情報、用語、ファイル名などを決めます。併せて、登録、編集、承認、公開を誰が担当するかを明確にします。

現場で運用できないほど細かなルールを設定すると、システム外での作業が増える可能性があります。実際の制作担当者や情報管理担当者を交えて設計することが重要です。

ステップ4.小さな範囲で運用を検証する

最初から全製品、全媒体、全言語へ展開するのではなく、特定の製品群や媒体を対象に試行します。入力負荷、検索性、更新時間、出力結果などを確認し、問題を修正してから対象範囲を広げます。

データ管理システムを選ぶ際のチェック項目

  • 現在使用している制作ソフトや業務システムと連携できるか
  • 文章、画像、図面、翻訳文を関連付けて管理できるか
  • 更新履歴や承認状況を確認できるか
  • 必要な情報を条件検索できるか
  • 印刷物やWebなど複数媒体へ出力できるか
  • 将来的な製品数や言語数の増加に対応できるか
  • 既存データをどのように移行するか
  • 運用開始後の保守やルール変更に対応できるか

パッケージ製品の機能だけで判断するのではなく、既存の制作工程に適合するかを確認する必要があります。場合によっては、制作ルールの見直し、マニュアル制作、翻訳、システム開発を一体で進めたほうが、部門間の分断を防ぎやすくなります。

データ管理の目的は「保管」ではなく「活用」

成功するデータ管理では、情報を一か所に集めること自体をゴールにしません。必要な情報を正しく検索でき、更新でき、複数の媒体や業務で再利用できる状態を目指します。

そのためには、データベースや管理システムだけでなく、原稿の作り方、用語、承認工程、出力方法まで含めて設計することが重要です。

セザックスでは、マニュアル制作、翻訳、印刷・デジタル媒体への展開、システム開発を組み合わせ、企業ごとの制作工程に合わせたデータ管理を支援しています。大量の製品情報や翻訳データの管理、既存ワークフローの見直しを検討している場合は、お気軽にご相談ください。

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